【理系必読】【書評】10年後、生き残る理系の条件 【レビュー】
AI技術の発達に伴い、僕たちの生活が大きく変わっていく、と言われています。
「これからもっと便利な世の中になるんだろうな」と期待する一方で、
「自分の仕事がいつか失われてしまうのでは・・・」
「でも、自分には高い専門性なんてないし・・・」
なんて考えてしまったりします。
本書はそんな理系の僕たちに、
「高い専門性も大事だけれど、これからの10年は自分の専門性以外の分野を学ぶことが重要だよ」
と教えてくれます。
本日のお題:10年後、生き残る理系の条件 【レビュー】
本書の概要
1. これまでの常識「終身雇用の終焉」
これまで日本の大企業たちは終身雇用制度を導入してきました。
そのため、技術者たちはある意味「安心して」目の前の技術革新に集中して取り組むことができました。
また、企業も、技術者は技術に集中し、スペシャリティを発揮することを求めてきました。
これまでは、技術の専門性が細分化され、自分が得意とする分野以外の技術にはついていきづらい構造となっていたのです。
こういった背景もあり、技術者にとっては、「転職しづらい」状況が続いていました。
しかしながら、トヨタ自動車の社長も発言したように、企業は「終身雇用を守っていけない」時代になりました。
これからの技術者は、自分のスペシャリティを確立しつつも、社内だけでなく世界でアピールできる技術・視野を持つ必要が出てきたのです。
2. 日本の技術者はもっと文系力(アピール力・英語・リーダーシップ・チームワーク)を磨こう
これからの技術者は、もっと自分の専門性をアピールし、自分が活かせる場所を切り開いていかなくてはなりません。
もう、企業は守ってくれないからです。
海外のポジションでも応募できるように、英語は必須のスキルになります。
さらに、モノを作ること・開発するうえで、チームをリードしていくスキルが必要です。
ここでいう「チーム」とは、自分とは異なる専門性を持つメンバーも含みます。
もはや、文系・理系というくくりは死語に近いかもしれませんが、これまで理系が苦手としていたスキル:アピール力・英語・リーダーシップ・チームワークを磨いていく必要があるのです。
3. 良質なインプットをして、「逆張り」しよう
本書では、
- 「自分の専門性」以外の技術へも視野を広げること
- 自分の技術を客観的にみること
これらの重要性を挙げるとともに、普遍的な真理、たとえば、化学、物理、数学などのすべての学問の礎となるジャンルへの一定以上の理解が必要であると述べています。
このような基礎学問を深く理解することで、次の「応用」が可能になるからです。
また、技術進歩にもトレンドがあり、そのトレンドばかりに目を向けて活動すると、結局は資金力が高い企業や、先人たちを量がすることが難しい。
さらに、トレンドは移り変わっていくものであり、そればかりを追い求めるのは本質ではない。
そこで、あえて流行以外にも視野を広げる(逆張りする)ことで、新しいものづくりへのアイデアが広がるはずだ、と主張されています。
感想
この「10年後、生き残る理系の条件」を読んで、理系の僕が感じたことを書いていきます。
著者について
本著の竹内健さんは、東芝でフラッシュメモリを立ち上げた第一人者です。
東芝時代に
MBO取得のため、海外留学を経験されています。
ご自身は、自分は普通のエンジニアだ、とおっしゃっていますが、かなりレベルが高い方です。
そのため、彼の「普通」感に共感はできませんでした・・・笑
一方で、ご自身のキャリアや所属する企業・研究室に対してあくまで客観的な視点をもつ(ある意味冷めている)というスタンスは、見習わなくてはいけないなあと思いました。
技術系として企業に所属すると、つい目の前の開発・技術開発にフォーカスしがちで、会社や業界が置かれている環境から遠ざかってしまうんですよね。
本書について
本書のタイトルは、「10年後、生き残る理系の条件」です。
本書を読む前は、「これから10年先の未来予測」が書いてあるのだろうな、と思い手に取りました。
しかし、内容を読んでいくと、「日本が遅れている数十年」と「その数十年を取り戻すために我々理系がやらなくてはならないこと」といった感じの内容でした。
だからといって、期待外れであったというわけでは決してなく、理系の人なら誰しもが感じている、
海外の大きなIT企業、例えばGAFA(Google, amazon, Facebook, Apple)と、日本の大手企業の成長スピード感の違い、ビジネスセンス、その他、なんだかわからないけど絶対的に存在している大きな差を少し言語化できるようになる、というきっかけをくれる内容です。
これからの理系として、ますます活躍していくために、本当に読んでよかった1冊です。